6歳未満の子供を車に乗せる場合、必ずチャイルドシートを付ける必要がありますよね。これを知っている人も多いと思いますが、みなさんはどこに付けていますか?
- 後部座席だと顔が見えなくて泣いてしまうから
- 隣だと世話をするのがラクだから
という理由から助手席にチャイルドシートを付けているという人もいると思います。
本当はチャイルドシートは後部座席に取り付けるものなんです。何かと都合が良いからという理由で助手席に付けているかもしれませんが、実は危険性があるということを知っていますか?
今回は、チャイルドシートを取付ける座席と重要性について解説していきます。
目次
チャイルドシートの基本をおさらい
まずは、チャイルドシートの基本についておさらいしておきましょう。
チャイルドシートの役割
そもそも、なぜチャイルドシートを利用しなければならないのかというと、小さなお子さんが安全に車に乗るためです。
衝撃から身を守るために装備されているのが「シートベルト」ですが、そもそもシートベルトは大人が装着することを前提として設計されているため、小さなお子さんではシートベルトが大きすぎてシートベルトとしての役割を十分に果たすことができません。
そこで、シートベルト代わりに小さなお子さんの同乗の安全性を確保するために利用されるのが、チャイルドシートなのです。
チャイルドシートの使用率
直近の調査によると、チャイルドシートの使用率は全体の約7割ほどに留まっています。チャイルドシートを使用することは法律で義務化されているのですが、それでも使用率100%にはほど遠いのです。
チャイルドシートの使用率がなかなか増加しない原因としては、親御さんの意識の問題が大きいでしょう。
- ・チャイルドシートの重要性を親がわかっていない
- ・子どもがチャイルドシートを嫌がっているのを容認している
- ・「急いでいる」、「近くだから」と例外を作ってしまっている
- ・購入や買い替えを面倒くさがっている
警視庁によると、チャイルドシートを正しく使用できている場合と、チャイルドシートを使用していない場合だと、後者の方が自動車同乗中の子どもの死亡率が5倍に跳ね上がるとされています。
大切なお子さんが車の事故で亡くなるリスクを少しでも抑えたいと思うのであれば、きちんとチャイルドシートを利用してお子さんの安全性を確保してあげてくださいね。
また、こども自身も自分の場所という意識があるのか、嫌がることなく座ってくれました。成長することで座り心地も窮屈になっている様子もありましたので、成長に合わせて2回買い替えた記憶があります。
チャイルドシートの取り付け方法
チャイルドシートは、正しく取り付けしていないと安全性を確保することができません。まず、ご自身の車の車種に適合するチャイルドシートを用意してください。
また、中古品を購入する場合や知り合いから譲り受ける場合には注意が必要で、必要なパーツがすべて揃っていることを確認してください。
チャイルドシートには、2種類あります。
- ・シートベルト固定タイプ
- ・ISOFIX(アイソフィックス)固定タイプ
シートベルト固定タイプは3点式シートベルトを利用して、座席にチャイルドシートを固定します。
一方でISOFIX固定タイプはあらかじめ車に取り付けられている固定金具に、チャイルドシートをはめて固定するタイプです。
<シートベルト固定(後ろ向きに設置する場合)>
- 座席との間に隙間ができないようにチャイルドシートを後ろ向きに置く
- シートベルトをチャイルドシートの指定位置に通してバックルにカチッと音がするまで差し込む
- 肩ベルトをチャイルドシートの「後ろ向き用の指定位置」に通す
- チャイルドシートを背もたれ側に押しつけながら肩ベルトを強く引っぱり、腰ベルトのゆるみをとる
<シートベルト固定(前向きに設置する場合)>
- 座席との間に隙間ができないようにチャイルドシートを前向きに置く
- シートベルトをチャイルドシートの指定位置に通してバックルにカチッと音がするまで差し込む
- 肩ベルトをチャイルドシートの「前向き用の指定位置」に通す
- チャイルドシートの座面に肩ひざを乗せて体重をかけながら、チャイルドシートを座席に押しつけながら肩ベルトを強く引いて腰ベルトのゆるみをとる
<ISOFIX固定>
- ISOFIXガイドキャップがある場合は車のISOFIX固定金具に差し込む
- チャイルドシートのレッグサポートを起こす
- チャイルドシートの背面の下側に2か所取り付けられているコネクターを引き出す
- コネクターを車の固定金具にカチッと音がするまで差し込む
- レッグサポートの長さを調節する
- インジゲーターが赤色から緑色になっているかも確認する
詳しい固定方法はチャイルドシートの取扱説明書を読んで確認し、いずれは説明書を見なくても正しく固定できるようにマスターしておきましょう。
助手席にチャイルドシートはOK?
6才以下の子供にはチャイルドシートの着用が義務づけられています。これは2000年2月の道路交通法改正により法律として義務付けられました。チャイルドシートを付けずに警察の取り締まりを受けた時は、違反点数1点の罰則が科されます。
警察庁の資料によると「チャイルドシートを使用しましょう」とありますが、その後には「お子様はできるだけ後部座席に乗せるようにしましょう」という記述があります。
(警察庁「お子様を車に乗せる際の注意事項について」:https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/childseat/kokkousyou_keisatutyou_leaflet.pdf)
ということは、後部座席でなくてもいいということです。ですから、「助手席にベビーシートを付けても違反ではない」ということ。
しかしながら、危険性があるので後部座席のほかは、推奨はされていないということですね。
助手席のチャイルドシートはどうして危険?
違反ではないのに、なぜ、おすすめできないのでしょうか?
まず、こんな事故が起きています。
『2021年8月31日午前8時半ごろ、福岡県田川郡福智町伊方の県道で、母親が運転する軽乗用車が右折待ちの乗用車に追突。助手席でジュニアシートに座っていた5歳男児が腹部圧迫による内臓損傷により死亡しました。(毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20210831/k00/00m/040/130000c )』
運転者の母親と追突されたドライバーにも大きなけがはありませんでした。ところが、助手席でジュニアシートを使用していたのにもかかわらず、子供だけが命を落としてしまったのです。
このケースでは「本来は腰骨をわたるように装着すべき腰ベルトがお腹に掛かっていた可能性が高い」ということ。「助手席のエアバッグで圧迫されたのが原因では?」と多くの人がコメントしていましたが、この事故ではエアバッグの直接的な影響はなく、ベルトの付け方に問題があったと考えられています。
このようにしっかりと付けたつもりでも、位置が違っているとこのような思わぬことが起きるかもしれないのです。
たとえ、いくら急いでいるとしても適当に付けるのではなく、正しい位置にベルトを付けることが子供の命を守ってくれるということを忘れないようにしましょう。
慣れるまでは説明書を手元に置いてつけるようにし、また、慣れてきても時々、見直すこともでさらに安全に装着してあげることができます。慣れてくるとつい自己流になりがちな人は特に注意が必要ですね。
エアバッグの仕組み
衝突時に体へのダメージを軽減してくれるのがエアバッグです。エアバッグについてもおおまかに知っておくと今後の安心度が高まりますよ。
エアバッグというと、その名の通り、「衝突すると空気の入った袋が瞬時に出てくるんでしょ」というイメージかと思います。
ところが、高速道路などでスピンして側にぶつかる、衝撃が吸収されるような場所にぶつかった場合などエアバッグが作動しないことがあります。そのような時には、シートベルト着用が重要になるのです。
さらにエアバッグは1回限りです。たたんでしまえばいいじゃないと思われがちですが、エアバッグは1回限りの使い捨てです。
エアバッグが作動すると腹部や頭部を包み込んでくれますが、衝突したスピードによって腹部の痛みや足の打撲などの症状が発生すると言われています。
もし、40km/hで壁に衝突した場合、ビルの2階から落ちて地面にぶつかるのと同じとされてます。それはかなり痛そうです。骨折だけでは済まず、打ち所が悪ければ即死すらしてしまいそうですね。
ちなみにエアバッグを初搭載したのは1967年クライスラー製。現在、世界中で使用されている一般的なエアバッグは1963年に日本人の小堀保三郎氏が発明したものです。なぜかというと、発明当時は考え方が奇抜すぎて実用化しなかったという理由があります。
助手席とエアバッグの関係性
助手席にチャイルドシートを付けても違反ではありませんが、なぜ、後部座席のほうがいいのか、その理由はエアバッグです。
車にはエアバッグが装備されていますが、このエアバックは大人の体格を想定して作られているものです。体が小さい子供用には作られていないということになります。そのため、本来体を守ってくれるはずのエアバッグが、エアバッグの威力によって子供にケガをさせてしまう恐れもあるのです。エアバッグはすごい勢いで飛び出てくるのでチャイルドシートが吹き飛ばされる、ベビーシートとエアバッグに挟まれてしまうという恐れがあります。
エアバッグで子供を守ることが難しい原因は、チャイルドシートに乗っている子供は、チャイルドシート分、エアバックに近い位置にいるためです。もちろん軽いケガぐらいで済めばいいのですが、窒息してしまっては元も子もありません。ですから、このような危険を避けるためにも助手席はできるだけ避けた方がいいとされているのです。
新生児から1歳過ぎまでは、チャイルドシートを後ろ向きで装着しますが、このような場合はさらにエアバックに近くなってしまうのでNGです。
チャイルドシートの設置は後部座席がベスト
運転席の後ろに設置
昔から「運転席の後ろが一番安全」と考えられています。それではチャイルドシートは運転席の後ろでしょ! という人も多いと思いますが、実は後部座席が安全とは限りません。車種や車格によって大きく違ってくるのです。
たとえは、『ボルボ・カージャパン』ではどの席の安全性も同じと発表しています。
ただ、事故を起こすとき、運転している人はとっさに右にハンドルを切ってしまう確率が高くなるので、助手席側の被害が大きくなることが予想されます。このことから、やはり運転席の後ろのほうが比較的安全だと考えられるんですね。
助手席の後ろに設置
助手席の後ろは歩道側となるため、子供の乗せ降ろしするためには安全です。子供が大きくなって自分で降りられるようになっても歩道側なら、反対の車道側に飛び出すこともないはずです。「運転席の後ろ」か「助手席の後ろ」はどっちつかずで迷うところですが、いずれも違った良さがあります。そのため、使いやすさで選ぶというのも1つの手です。
チャイルドシートは前向き?それとも後向き?
チャイルドシートには「前向き」と「後ろ向き」設置の2種類があります。
後ろ向きタイプのチャイルドシート
新生児用のチャイルドシートは進行方向に対して後ろ向きが基本。理由は事故が起こった時、背中の広い面で衝撃を分散できて安全だからです。
このため、0~1歳の乳児用のものは後ろ向きタイプとなっています。
たとえば、『Aprica(アップリカ)』の「フラディア グロウ ISOFIX セーフティープラス」は後ろ向きだけでなく、回転してベッドのように平らになるタイプもあります。
アップリカ「フラディア グロウ ISOFIX セーフティープラス」
(楽天より https://item.rakuten.co.jp/netbaby/404636/)
前向きタイプのチャイルドシート
前向きタイプのチャイルドシートは、進行方向を向いた状態で設置するものです。大人が座る方向と同じだから、助手席から後ろを振り向けば、子供の様子を確認することができます。
法律上、どちらのタイプを使っても全く問題はありませんが、後ろ向きタイプのベビーシートを助手席に設置するのは絶対にNGと考えられています。ここは道理にかなっているので守りたいところですね。
『助手席とエアバッグの関係性』でもお伝えした通り、理由はエアバックと赤ちゃんとの距離が近くなり過ぎてしまうためです。
チャイルドシートの安全性について
チャイルドシートには「R44」、「R129」、i-Size(アイサイズ)といった表記が見られます。安全基準にはいろいろあることはわかっても、何がどう違うのでしょうか。
これまでの安全基準は「R44」でしたが、「R129」という新安全規制となりました。見落としがちなのがドア側。ドアしかなく、体も近いため側面からぶつかると直接的に衝撃を受けやすいのです。このように「R129」は自動車先進地域であるヨーロッパの国際経済委員会が制定したISOFIX対応のチャイルドシート最新安全基準のことを指します。
- ・後ろ向き装着は生後12カ月頃までが「生後15カ月未満まで」
- ・後ろ向き装着の体型基準は体重基準から身長と月齢基準へ
この2点について詳しく見ていきましょう!
後ろ向き装着は生後15カ月未満まで
後ろ向きの装着が生後12カ月頃(体重9kg)までの基準でしたが、新基準では生後15カ月未満までが義務になりました。月齢が15カ月を過ぎても身長が76㎝未満の場合、前向きでの使用はできませんので注意しておきましょう。
後ろ向き装着基準は身長と月齢基準
体重を基準とすると、体の大きい赤ちゃんは月齢が達していないうちから前向きでもOKということになることもしばしば。
しかし、体がいくら大きくても赤ちゃんは赤ちゃんですから、万が一の事故の衝撃に対応できません。そのため、身長と月齢基準に変更したことで安全性が確保されるようになったのです。安心基準ですね。
チャイルドシートを助手席に取り付ける時の注意点
しかしながら、車の大きさ、乗車人数、子供の数などさまざまな理由からベビーシートを助手席に取り付けなければならない状況もでてきます。
推奨されないとはいえ、どうしても助手席にベビーシートを取り付けないといけないときには、以下の2点を守るようにして!
- ・取り付けるのは前向きタイプだけ
- ・できるだけ座席を後ろに下げて設置すること
取り付けるのは前向きタイプだけ
助手席に取り付けるベビーシートは、後ろ向きのものは使わず、前向きのものだけにしましょう。事故が起きた場合、エアバッグが背面に当たってしまい、ケガの原因になる恐れがあります。もちろん、エアバッグが作動しないようにできる車種であれば、後ろ向きのベビーシートを使っても問題ありません。
できるだけ座席を後ろに下げて設置すること
できるだけ座席を後ろに下げて設置し、エアバッグとの距離をしっかり取るようにしましょう。絶対に子供を守ってあげたい気持ちを忘れずに、常に万が一のことを考えておくことです。エアバッグが作動したときに子供が圧迫されないように後ろまで席をスライドさせ、エアバッグと距離を広げるようにしておきましょう。
ベビーシートの正しい取り付け方
警視庁とJAFによる「チャイルドシート使用状況全国調査(2019年)」
(JAF https://jaf.or.jp/common/safety-drive/library/survey-report)
によると、正しくチャイルドシートが取り付けられていたのは、乳児用で約6割、幼児用で約4割という結果が出ています。チャイルドシートが正しく付けられていない人が多いということですので、もう一度取扱説明書を見て、正しい取り付け方をしているかどうかを確かめましょう。
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1肩ベルトは浮いていませんか
しっかりと取り付けられていないケースが多いので、肩の高さに合わせて通し穴が来るように合わせます。
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2適切に取付けられていますか
取り付け方法は「シートベルト固定」「isofix固定」の2つ。「シートベルト固定」では、シートベルトにねじれがないかどうかを確認しましょう。「isofix固定」は、シートベルトは使わず、シートと車を専用の金具で固定します。簡単に固定できますが、正しい方法かどうかもう一度チェックしておきましょう。
まとめ
チャイルドシートは助手席に付けてもOK?かという点については、違法ではありませんが、万が一、エアバッグが作動したときの危険性を考えるとあまり推奨はできないということでした。
車内で安全なのは後部座席です。可能であれば、おすすめのベビーシートの位置は後部座席です。
どうしても助手席へ取り付ける場合は、シートを最大限に後ろにして、チャイルドシートが正しく取り付けられているかどうかをしっかりと確かめましょう。不意の事故は自分が気を付けていても相手のミスから受けることもあります。安全運転はもちろんですが、大切なこどもを守るために確実は装着と確認のひと手間を心掛けてあげましょう。