「出産」には、相応のお金が必要になります。それを自己負担で賄うと、金銭的負担が大きくなりますよね。実は、出産費用に対しては「補助金」があるので、出産費用の金銭的負担を補助金で補うことができるのです。
ここでは、出産時の補助金の金額や、もらうための手続きの方法などについて解説します。これから出産を控えている方や、妊娠を意識されている方にとって役立つ情報を盛り込んでいますので、ぜひ参考にしてくださいね。
出産費用は平均でいくらかかる?
冒頭でも述べていますが、「出産」には相応の費用がかかります。では、具体的にいくら程度かかるのでしょうか?
平均で50万円
公益社団法人国民健康保険中央会が発表しているデータによりますと、出産にかかる費用は平均すると50万円前後になるとされています。内訳としては、入院料が約11万円、分娩料が約25万円で大半を占めていて、それ以外にも数万円ほどの諸費用がいくつか発生することで合計で50万円ほどになるのです。
もちろん、どの病院でどういった治療を受けるかによって医療費は変動しますが、それでも50万円前後の費用がかかることは想定しなければならないでしょう。場合によっては、貯金だけでは50万円という出産費用を賄うことが難しいという方もおられるのではないでしょうか。
出産の平均年齢とその年齢の平均収入
出産費用が50万円かかるとなると、「収入に対してどれくらいの負担になるのか?」ということが気になる方も多いでしょう。それを調べるためには「出産時の平均年齢」についても調べておく必要があります。
少子化社会対策白書(令和2年度)によると、初めて出産する女性の平均年齢は30.7歳となっています。この数値は、昭和後期の初産年齢の平均が25歳前後であることを考えると、費用や女性の社会進出などの影響により遅くなっているといえるでしょう。
転職・求人doda(デューダ)の調べによると、30歳の平均年収は約400万円となっています。つまり、出産費用の50万円を賄うためには、年収の8分の1相当の金額を費やす必要があるということなのです。
平成29年度の家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)によると、30代独身者の金融資産保有額の平均値は589万円、中央値は83万円となっており、40%の人が金融資産ゼロという結果が出ています。50万円という出産費用を、貯金だけで賄うことが難しい人も相応数存在しているということになりますね。
出産費用の負担を軽減できる補助金の存在
約50万円という出産費用を、貯金だけで賄うことが難しいという方もおられるでしょう。また、それゆえに妊娠・出産を断念しているというご夫婦もおられるのではないでしょうか。お金の問題が、家族の幸せを阻害してしまうことは悲しいことです。
そんな方におすすめしたい制度が「補助金」です。補助金を利用することで出産にかかる費用の負担を軽減し、出産や子育てに関する費用面での不安を払しょくすることができます。もちろん、誰でも利用できるというわけではありませんが、利用条件をクリアできる人であればできる限りその恩恵を受けて、出産費用の負担を軽減するべきでしょう。
出産費用に利用できる補助金①「出産育児一時金」
出産時に利用できる1つ目の補助金は「出産育児一時金」です。被保険者およびその被扶養者が出産した時に協会けんぽヘ申請されると、1児につき42万円が支給されます。
支給される金額
出産育児一時金により支給される金額は、出産した赤ちゃん1人につき42万円です。双子など、複数の赤ちゃんを一度に出産した場合は、出産した赤ちゃんの人数分だけ支給されます(双子なら84万円)。
ただし、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は、支給額が赤ちゃん1人に付き40.8万円となります。
出産費用の平均が50万円なので、現行の補助金制度では出産費用のすべてを出産育児一時金では賄えないという計算になります。しかし、差し引けば負担は約8万円になりますから、出産費用の負担を大幅に抑えられることに違いはありません。
支給を受けるための条件
出産育児一時金の支給を受けるためには、「健康保険の被保険者または被保険者の家族(被扶養者)が、妊娠4か月(85日)以上で出産をしたこと」という条件を満たす必要があります。
なお、早産や死産、流産や人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)である場合も、支給対象として含まれます。
また、健康保険の資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上ある方が、資格喪失日から6ヵ月以内に出産したときは出産育児一時金が支給されます。ただし、資格喪失後に被扶養者となった場合は、「資格喪失後の出産育児一時金」または「家族出産育児一時金」のどちらかを選択して受けることになり、二重に受け取ることはできません。その他、被保険者の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されませんので注意が必要です。
出産育児一時金の支給方法
出産育児一時金の支給は、2種類の支給方法があります。
1つ目は「直接支払制度」です。これは出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるように、協会けんぽから出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組みとなっています。
一般的な保険契約の場合、保険金が支払われるのは「医療費などを支払ったあと」であるため、医療費の支払いに一時的に自己負担が生じます。出産育児一時金の場合は出産費用の支払いに対して直接、出産育児一時金を充当することができるため、出産費用の一部だけを自己負担すれば良いことになります。50万円前後というまとまった金額を用意する必要がないため、金銭的な負担が最小限に抑えられますね。
2つ目は「受取代理制度」です。直接、医療機関に出産育児一時金が支払われることを希望しない場合は、出産後に被保険者の方から協会けんぽに申請することで出産育児一時金を支給する方法となっています。
直接支払制度では事務的な負担や資金繰りの影響が大きいと考えられる施設(年間の分娩件数が100件以下または収入に占める正常分娩にかかる収入の割合が50%以上で、厚生労働省へ届け出た診療所・助産所)については、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る方法である受取代理制度を利用することができます。
出産費貸付制度
補助金以外にも、出産育児一時金に関連して利用できる制度があります。それは「出産費貸付制度」です。
出産費貸付制度は、出産費用に充てるために出産育児一時金(家族出産育児一時金)の支給までの間に、出産育児一時金の8割に相当する金額を限度として資金を無利子で貸し付ける制度となっています。健康保険の被保険者または被扶養者であり、出産育児一時金の支給が見込まれる方のうち出産予定日まで1ヵ月以内または妊娠4ヵ月以上で医療機関等に一時的な支払いが必要な方が対象です。
提出する書類
出産育児一時金の支給のためには「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」と「健康保険出産育児一時金支給申請書」の2つの書類を提出する必要があります。どちらも、全国健康保険協会のホームページからダウンロードすることができます。
・全国健康保険協会ホーム 子どもが生まれたとき
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3280/r145/
出産費用に利用できる補助金②「出産手当金」
2つ目の補助金は「出産手当金」です。約100日間の給料の、3分の2相当額を支給してもらうことができます。
支給される金額
健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合において支給されます。対象期間は出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前の42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後の56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。出産日は出産の日以前の期間に含まれ、出産が予定日より遅れた場合はその遅れた期間についても出産手当金が支給されます。
支給される金額は、簡単に言えば「もらっていた給料の3分の2」です。具体的には、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した金額を30日で割って、それに3分の2をかけた金額が1日あたりの支給金額になります。
なお、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、以下のうち低い金額を使用して計算されます。
1,支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
2,30万円(支給開始日が平成31年3月31日以前の場合は28万円)
資格喪失後の出産手当金と傷病手当金を受けられるとき
健康保険の資格喪失の日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者の資格喪失の日の前日に現に出産手当金の支給を受けているか受けられる状態(出産日以前42日目が加入期間であること、かつ退職日は出勤していないこと)であれば、資格喪失後も所定の期間の範囲内で支給を受けることができます。
また、平成28年4月からは、「傷病手当金」の金額が出産手当金の金額よりも多い場合、その差額を支給してもらうことができます。
提出する書類
主産手当金を支給してもらうためには「健康保険出産手当金支給申請書」の提出が必要です。同じく、全国健康保険協会のホームページからダウンロードすることができます。
・全国健康保険協会ホーム 出産で会社を休んだとき
出産後の費用についても考慮しよう
出産費用は相応の金額なので不安に感じる方も多いのですが、それ以外にも「出産後の費用」つまり育児にかかる費用についても考慮しなければなりません。赤ちゃんを育てるのにはお金がかかりますから、それを考えるのは親として当然ですよね。
子育てにかかる費用の負担を軽減するためには「児童手当制度」が役立ちます。
児童手当制度の支給対象と支給金額
児童手当制度は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に対して、3段階で支給されます。
・3歳未満:一律15,000円
・3歳以上~小学校修了前:10,000円(第3子以降は15,000円)
・中学生:一律10,000円
児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上で所得上限限度額未満の場合は、特例給付として月額一律5,000円が支給されます。支給は原則として、毎年6月・10月・2月の3回に、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
児童手当制度のルール
児童手当制度には、以下の5つのルールが適用されます。
1,原則として、児童が日本国内に住んでいる場合に支給(留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象)
2,父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給
3,父母が海外に住んでいる場合は、その父母が日本国内で児童を養育している方を指定すればその方(父母指定者)に支給
4,児童を養育している未成年後見人がいる場合は、その未成年後見人に支給
5,児童が施設に入所している場合や里親などに委託されている場合は、原則として、その施設の設置者や里親などに支給
児童手当制度の手続き
児童手当制度の支給を受けるためには、お子さんが生まれたり、他の市区町村から転入した際に現住所の市区町村に「認定請求書」を提出する必要があります。市区町村の認定を受ければ、原則として申請した月の翌月分から支給されます。
続けて手当を受ける場合に行う手続きですが、令和4年6月分以降については提出が不要になります。ただし、以下に該当する場合は、引き続き現況届の提出が必要になるので注意しましょう。
1,住民基本台帳上で住所を把握できない、法人である未成年後見人
2,離婚協議中で配偶者と別居されている場合
3,配偶者からの暴力等により、住民票の住所地と異なる市区町村で受給している場合
4,支給要件児童の戸籍がない場合
5,施設等受給者
6,その他、市区町村から提出の案内があった場合
また、以下に該当する場合は、お住いの市区町村に届出が必要になります。
1,児童を養育しなくなったことなどにより、支給対象となる児童がいなくなった場合
2,受給者や配偶者、児童の住所が変わった場合(他の市区町村や海外への転出を含む)
3,受給者や配偶者、児童の氏名が変わった場合
4,一緒に児童を養育する配偶者を有するに至ったとき、または児童を養育していた配偶者がいなくなった場合
5,受給者の加入する年金が変わった場合(受給者が公務員になったときを含む)
6,国内で児童を養育している者として、海外に住んでいる父母から「父母指定者」の指定を受ける場合
まとめ
出産と育児には、相応のお金がかかります。これを自己負担で賄うとなれば相応の金銭的負担になりますので、出産育児一時金などの補助金制度を活用して負担を最小限に抑えましょう。不明な点があれば、産婦人科の担当医などに相談して、滞りなく手続きできるようにしてくださいね。