出産について

無痛分娩とは?メリット・デメリット、費用やリスクを解説

2022年2月3日

無痛分娩とは?

出産時の痛みへの不安から、無痛分娩を検討している方も多いのではないでしょうか。
「無痛分娩って実際どうなの?」「費用はどれくらいかかるの?」「リスクはないの?」など、様々な疑問や不安があるかもしれません。

この記事では、無痛分娩の種類や流れ、費用、メリット・デメリット、そしてリスクについて詳しく解説します。
無痛分娩を検討している方はもちろん、「無痛分娩って聞いたことはあるけど、よく知らない」という方も、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むことで、無痛分娩に関する正しい知識を身につけることができ、出産方法を選ぶ際の判断材料になるはずです。安心して出産を迎えられるよう、ぜひ最後までお読みください。

無痛分娩とは

無痛分娩とは

無痛分娩とは、出産時に麻酔を使って痛みを和らげる分娩方法です。
出産には痛みがつきものといいますが、どのくらい痛みがあるのでしょうか。普通分娩の場合、「前駆陣痛」の段階では「まだ耐えられるレベルの痛み」または「ひどい生理痛のよう」という方もいます。しかし本格的な陣痛になってくると、その痛みは「気を失ってしまうほど」という方も。

このように出産の話を聞くと、少し心配になってしまうかもしれませんが、現在出産の形もさまざまで、無痛分娩もあります。ここでは、無痛分娩の種類について紹介し、無痛分娩の流れについて見ていきます。

無痛分娩の種類

無痛分娩とは麻酔を使った出産方法ですが、言葉通り痛みを感じることなく出産できる、というわけではありません。誤解している方も多いと思いますが、あくまでも痛みを和らげるというだけで、完全に痛みがないというわけではないのです。

無痛分娩では、ほとんどが硬膜外麻酔を用いて行われます。方法としては、自然に陣痛が来るのを待ってから麻酔を打つ場合と、陣痛が来る前に促進剤によって陣痛を起こして麻酔を打つ場合の2つです。点滴から麻酔を投与する方法もありますが、こちらは母子への影響が大きいため、あまり用いられていません。

硬膜外麻酔

・背骨にある硬膜外腔にカテーテル(細くて柔らかい管)を入れ麻酔を投与

30分ほどで効果が出る

無痛分娩の流れ

無痛分娩は促進剤を打ってから麻酔を投与する方法を取ることが多いため、計画的に行う場合の流れを紹介します。

  1. 予定している日の前日か当日に入院
  2. 血圧計や心電図で体調をチェック
  3. 座薬の投与や浣腸
  4. カテーテルの挿入
  5. 子宮口を広げるためバルーンを挿入
  6. 陣痛促進剤を投与
  7. 痛みが出てきたら…麻酔を投与
  8. 分娩へ
  9. 痛みを和らげながら…出産

病院や妊婦さんの状態によっても細かい順序は変わってきますが、大まかな流れはこのようになっています。分娩までの過程にやらなければいけないことは多く、子宮口が開くまではやはりある程度の痛みは伴いますので、心の準備をしておくのがいいでしょう。

無痛分娩の前にやっておくべき準備

無痛分娩はまだまだ浸透していないので、分からないことも多いでしょう。そのため、無痛分娩を選択する前には、しっかりと準備しておく必要があります。

〇無痛分娩について知る

 無痛分娩とは他の出産方法とはどう違うのかということを知っておく必要があります。また、どの出産方法でもいえることですが、赤ちゃんを産むということは自分の命を懸けるということ。もちろんリスクもあります。無痛分娩のメリット・デメリットをしっかりと理解し、リスクも伴うということも頭に入れておきましょう。

〇家族と相談

無痛分娩に関して、あまりいい印象を持っていないかたもいらっしゃると思います。特に昔は「痛い思いをして産んでこそ立派な母親」という風潮もあり、痛みがほとんどない出産というものに抵抗をお持ちの方も。

出産は家族にとっても大きなことなので、一緒に乗り越えてもらえたら心強いですよね。そのためにはまずご自身の意思を伝え、相談することが大切です。無痛分娩にはメリットもありますが、当然リスクもあるので、パートナーやお互いの家族にもしっかりと伝えたうえで一番いい選択をしましょう。

〇無痛分娩を行っている病院を探す

無痛分娩を行っている病院はそれほど多くありません。できれば通院できる距離か実家の近くにあると安心でしょうから、無痛分娩を行っている病院を事前に調べておく必要があります。病院によって通院の開始時期などが決まっている場合もあるので、そちらも確認しておきましょう。

〇無痛分娩の教室や説明会に参加する

通院している病院や地域では、マタニティ教室などが開かれていて、不安や疑問を抱えている妊婦さんが気軽に参加できるものです。助産婦さんや産院で働く看護師、実際に出産を経験した先輩ママさんから話を聞けるチャンスなので、積極的に参加してみるといいでしょう。

実際に話を聞いてみるとまた印象も変わりますし、自分で調べるだけでは分からないこともあるので、理解を深めることが重要です。

無痛分娩の費用は?

無痛分娩の費用は?

出産は病気ではないため、出産の方法に関わらず保険適用の対象外です。出産までの間も検診があるため何度も通院します。そのため、「出産って意外とお金がかかるんだな」と驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ここでは無痛分娩にかかる費用はどのくらいか紹介し、助成金や保険はあるのかについて解説していきます。

無痛分娩と他の分娩方法では費用はどのくらい違う?

普通分娩の場合、最新の厚生労働省の調査によると約46万円ほどであることが分かっています。帝王切開はこの金額に加えてさらに手術費用が加算されるため、平均で510万円ほどプラス。

無痛分娩の場合も、麻酔を使うため、普通分娩にプラス約312万円ほどかかるといわれています。総額にすると50万円ほどかかることになるので、かなり高額になってしまうことは覚えておきましょう。

分娩方法

普通分娩

帝王切開

無痛分娩

費用

46万円

5156万円

4958万円

※平均の46万円を例にした場合

助成金や保険はあり?

出産は基本的に全額自己負担ですが、出産にかかる費用を抑えるために「出産育児一時金」というものがあります。これは42万円を上限に出産費用を支給してくれる制度です。出産前にこの制度を利用しておくと、窓口での自己負担額は、総額から42万円を引かれた額ということになります。

例)総額50万円の場合

50万円-42万円(出産育児一時金)=8万円(窓口で実際に支払う額)

また、無痛分娩を選択し、途中で帝王切開に切り替わった場合、あとで還付を受けられる「高額療養費制度」というものがあります。医療費控除の対象にもなるため、検診のときの領収書もすべて取っておき、出産の領収書とともにまとめて確定申告することも忘れずに行いましょう。

会社によっては出産助成金やお祝い金、還付制度などがある場合もあるので、事前に調べておくいいですよ。保険に加入されている方は、無痛分娩から帝王切開に切り替わったときに保険金がおりる場合もあるので、ご自分の契約内容もチェックしましょう。

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩を選択する際には、メリットとデメリットを知っておくことが大切です。いくつか紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。自分にとってどの方法がいいのか決めるために、いい面ばかりでなく、悪い面もあるということを理解しておきましょう。

メリット

〇痛みが和らぐ

まず何といっても最大のメリットといってもいいのが、痛みが和らぐということです。出産は一瞬だという方もいますが、いざその状況になってみると、とても長く感じてしまう方も多いのではないでしょうか。

その間、ずっとものすごい痛みがあるというわけではありませんが、陣痛には波があるため、やはり痛みはない方がうれしいですよね。痛みは少しありますが、普通分娩よりは楽なので選択する人が増えています。

〇出産後の回復が早い

痛みが和らぐことで、体への負担やストレスが軽減され、疲労がたまりにくくなるといわれています。そのため、それほど体力を消耗することなく、普通分娩よりも早く回復できるという声もあるのです。出産後は休む暇もなく赤ちゃんのお世話をするので、体力を温存できるというのはとても助かりますね。

〇落ち着いた気持ちで赤ちゃんを迎えられた

普通分娩の際は痛みに必死で赤ちゃんが出てくる瞬間を感じる暇などないほどです。しかし、無痛分娩で痛みが和らいでいる状態であれば、比較的リラックスした状態で赤ちゃんが出てくる瞬間を感じることができたという声もあります。

〇赤ちゃんへの負担が少なくなる

出産時は痛みがひどいときにはついつい呼吸をするのを忘れ、いきむときには息を止めます。その都度赤ちゃんへの酸素も止まってしまうため、あまり長い時間酸素が行かない状態が続いてしまうのは、赤ちゃんへ負担がかかってしまいます。無痛分娩の場合はその心配がないため、赤ちゃんにとってもいいことなのです。

デメリット

〇陣痛促進剤が痛い

陣痛促進剤とは、人工的に陣痛を起こすものです。微弱な痛みから始まり、徐々に痛みが強くなっていきますが、これがずっと続きます。また、子宮口にはバルーンと呼ばれる小さめの風船を入れますが、入れる瞬間がとても痛いという方もいます。進みは早いですが自然陣痛よりも痛いという意見も多いため、子宮口が開くまでは痛みを伴うことを覚えておきましょう。

〇体調の変化

無痛分娩をした方の中には、出産後に発熱や足のしびれ、吐き気などがあったという話も聞きます。麻酔で痛みを和らげたことによって副作用が起き、体調に変化が見られるのです。

〇費用がかかる

促進剤や麻酔を使用するため、その分費用がかかります。後から還付を受けられたり、お祝い金などがもらえたりする場合もありますが、普通分娩よりは高額になってしまうため、通常よりも余裕を持って用意しておきましょう。あらかじめ病院で確認しておくのもいいですね。

無痛分娩のリスクとは

無痛分娩は出産の負担を少しでも減らすためにと行うものですが、リスクもあります。主なものとしては以下の通りです。

  • ・分娩時間が長引くこともある
  • ・血栓ができやすくなる
  • ・排尿障害
  • ・麻酔の際に神経を傷つけてしまうことも
  • ・合併症を引き起こすことがある

どの出産方法でも一定のリスクはありますが、無痛分娩の場合は薬を多く使います。その分覚悟も必要となるため、リスクに関しては病院でしっかりと話を聞いて理解しておきましょう。

無痛分娩を選択したほうがいい人・できない人

無痛分娩は、選択できる人や、無痛分娩の方がいい人もいますが、できない人もいます。もし無痛分娩を希望している人でも、できない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

無痛分娩を選択する人

無痛分娩は自ら選択する場合もありますが、無痛分娩にした方がいい方もいます。

  • ・痛みに弱い(痛みに対して強いストレスを感じる)
  • ・前の出産が難産だった
  • ・出産に対して大きな不安や悩みを抱えている
  • ・血圧が高い

上記のような方は、出産に対して人よりもリスクを抱えているため、無痛分娩の方が向いているでしょう。もちろんそれ以外の方でも出産方法にお悩みの方は選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。

無痛分娩できない人もいる

無痛分娩は誰でも行えるというわけではありません。持病や体質によって選択できない方もいます。

  • ・心臓や血液などの病気がある
  • ・血が止まりにくい
  • ・麻酔のアレルギーがある
  • ・肥満気味の方

上記のような方は麻酔が打てないので、無痛分娩は難しいでしょう。しかし、ご自分で判断するのはNGです。もし上記に当てはまっていると感じていても、まずは医師に相談してみましょう。ご自分に合った出産方法はどれか一緒に考えてくれますよ。

まとめ

無痛分娩のメリット・デメリット

出産とは、個人差はありますが、ほとんどの方が想像を絶する痛みを経験します。そのため、できることなら痛みを感じずに出産したいと願う方も多いのではないでしょうか。

無痛分娩は、名前こそ聞いたことはあっても実際に行うにはまだ少しとまどいや抵抗があるかもしれません。しかし、「壮絶な痛みを経験する」ということは出産において絶対ではありません。避けられるリスクは避けて、無事に出産できることが第一です。

ただでさえ出産には大きな覚悟と体力が必要なので、不安はできるだけ取り除いておくことがベストです。パートナーや家族と無痛分娩についてよく理解し、メリット・デメリットを共有したうえで、ご自分と赤ちゃんが安心安全でいられる方法を選択してくださいね。

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  • この記事を書いた人

助産師ゆき

看護師免許
助産師免許
保健師免許

8年間助産師として勤務し、様々な妊産褥婦さんと関わり勉強させていただきました。
その後2020年に第1子を出産し、今までの経験を総動員して育児をしてみたものの上手くいかないことが多々あり、育児の難しさを身に染みて感じました。でもそれ以上に子供は可愛く大変さも吹き飛ぶ日々。現在は育休から復職し、育児の経験を踏まえ、専門的な知識だけではなく、生活で役に立つ情報を伝えられたらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします!
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