妊娠後期になると、出産を間近に控えているため、心配事や不安なことで頭がいっぱいになってしまうママさんも多いものです。妊娠中はうれしい気持ちと合わせて毎日、さまざまな体調の変化を経験することになるママさんですが、赤ちゃんが大きくなって臨月を迎える時期には「おりもの」には注意したいという点をお伝えしておきたいと思います。
妊娠前からおりものについては馴染みのあるママさんもいるかもしれませんが、妊娠中のおりものの変化は子宮やその中の赤ちゃん、ママさんの体調の変化を知らせるための大切なサインになります。そのサインを見逃してしまうことで、出産までの間や出産を迎えるときに難しい問題につながってしまうこともあるので、妊娠中はいつもより少し気にとめるようにしてみてください。
ここでは、妊娠後期にみられる「水っぽいおりもの」の原因などを中心に、おりものの変化について解説します。不安が少しでもなくなるといいです。
目次
妊娠後期におりものが変化する原因
まずは、なぜ妊娠後期には、おりものの状態が変化するの?気になるその理由について解説します。
女性ホルモンが増えるから
通常、妊娠中はおりものの量が徐々に増えるものですが、これは妊娠周期に比例して増加する「女性ホルモン」の分泌量が原因なんです。
女性ホルモンの「エストロゲン」には、出産に備えて子宮や乳房を大きくしたり、子宮頸管の粘液を増やす働きがあります。妊娠するとエストロゲンの分泌量が増加するので、それによって頸管粘液も増加するため、おりものの量も多くなるんです。
ママさんの体内におけるエストロゲンの分泌量の増加は、基本的に妊娠週数と正比例します。そのため、妊娠後期になると妊娠初期や妊娠中期に比べておりものの分泌量も増加するということです。
また、女性ホルモンの影響はおりものの「量」のほかにも、おりものの「におい」「色」にも変化をもたらす可能性があるので、いつもとなんか違うおりものかなという時は、おりものの状態をよく把握しておくと安心ですよ。
何か病気や異常事態が起こっている可能性も
通常、妊娠周期に比例したおりものの量の増加やにおいなどの変化は、ママさんにとって自然なことなので、神経質になったり過剰に警戒する必要はありません。しかし、おりものの量が急激に増加したり、妙に水っぽくなっているなど、通常の変化とは明らかに違う状態になっている場合は、何らかの病気や異常事態を原因としている可能性があるので少し注意が必要になってきます。
こうした問題や異常は、初期の段階で見つけることで、その後に迅速かつ適切な行動をとることができるので、大事に至らずに済む可能性は十分にあります。しかし、いつもと違うおりものの異常を見逃してしまうことで、異常事態を放置してしまうことになってしまいます。妊娠中の毎日は身体が重いという状況だけでも大変なので、あっという間に1日が過ぎてしまうものです。
おりものの変化は、ママさんに健康状況を伝え、お腹の中の赤ちゃんが無事に産まれてくるために必要な身近なサインといえます。重要なことは「おりものや体調の変化にいち早く気がつく」ことです。
妊娠後期はお腹の中の赤ちゃんが生まれてくる準備を整えているデリケートな時期ですから、この時期にママさんができることは、毎日きちんとおりものやご自身の体調の変化を把握しておくことです。おりものに何か異変が見られた時は慌てずに、速やかに病院に連絡して必要に応じてすぐに病院を受診して検査や治療を受けましょう。
「ただの水っぽいおりもの」と「危険な妊娠後期での破水」の違い
ひょっとしたら、その水っぽいサラサラしたおりものの正体は「妊娠後期の破水」の可能性もあるんです!
破水とは?
よく「先に破水しちゃって慌てちゃった!」という話を聞くことがありますが、「破水」とは、ママさんの体内で卵膜が破れて、子宮内の「羊水」が外へ流れ出すことです。破水はどのママさんも同じタイミングで起こるようなものではなく、陣痛前に来るものや陣痛後に来るものなど、多くの場合は何の前触れもなく来るので驚くママさんも多いでしょう。
あるママの破水のお話ですが、
「出産前の入院が決まっていて病院に向かうタクシーの中で、なんか下半身が冷たいな~と思ったら、なにやら湿っている感触があり、初めての妊娠だったので破水のことは全くノーマークで頭が真っ白になってしまったけれど、タクシーの運転手さんが女性で出産経験者だったこともあり温かく対処してもらってありがたかった。」
というエピソードがあります。
また、予定日の近いママさんが、
「トイレで今日はおりものが多いな~と思ったら、それが破水だったらしいということが後々助産婦さんと話しの中で分かった。」
このように、いつ破水が起こるのかは個人差があるので、おりものと思い込んでしまうことも仕方ありません。それでもみなさん無事に出産されていますのであまり恐れずに過ごしていきましょうね。
破水には以下の4種類のパターンがあります。
・適時破水
通常のタイミング(子宮口全開時)で起きる破水(子宮口が全開(10cm)になったとき)
・早期破水
通常より早いタイミングで起きる破水(陣痛の始まり~子宮口が全開になるまで)
・前期破水
陣痛が始まる前に起きる破水
・高位破水
卵膜の上部が破けることで起こる破水
破水の種類の中でも「適時破水」であれば問題ないのですが、「前期破水」や「高位破水」の場合は少し注意が必要です。感染症などのリスクがありますので、速やかに医療機関に連絡して適切な処置を受けましょう。
おりものと破水の違い
妊娠後期の水っぽいおりものは、破水と見分けがつかないケースも珍しくありません。まずは、破水の特徴から見ていきましょう。
- ・水のようなサラサラしていることが多く、腟から突然液体が流出する。
- ・一気に出る場合と、ちょろちょろだが出続ける場合がある。
- ・色は透明か白っぽいことが多いが、黄色が混ざっている場合ある。
- ・においは生臭いか甘酸っぱい感じ、独特のにおいを感じる。
次に、おりものの特徴は次のとおりです。
- ・白っぽくネバつきがあるが、妊娠後期は水っぽいこともある。
- ・色は少し黄色がかっていることもある。
- ・匂いは少ないが、酸っぱい匂いがすることもある。
色や質感での見分けは難しいのですが、特徴で大きな違いとしては「破水は独特のにおいがある」という点が挙げられます。しかしながら、どちらも若干ですが酸っぱいにおいがする可能性がありますので、その場合だと見分けがつかない可能性もあるでしょう。
破水については、以下の記事も参考になりますので、お時間あればぜひこちらも読んでみてください。
- 破水とは?種類や色・量・匂いの特徴|対処方法について徹底解説!
https://cuseberry.com/blog/maternity-hasui/
おりもの?それとも破水?判別するより大切なこと
「水っぽい織物が出ているだけで問題はない」のか「異常なタイミングでの破水で問題がある」のかの判断は、産婦人科医療に詳しくない方では極めて難しいんです。そのため、水っぽいおりものが出ている際には、破水である可能性を考慮して以下の行動をとってください。
まずは病院に連絡する
「破水したから、すぐ病院に行かないと!」と考えるママさんも多いでしょうが、慌てずにまずは落ち着きましょう。そして、病院に連絡です。病院に確認しておきたい点は、病院に行くまでの間にどのような対処が必要なのか、いつごろに病院へ行けば良いのかを確認することが重要です。
破水している可能性があるとなれば、病院側でも相応の準備がありますので、冷静にその時の状況を医師に伝えて、適切な指示を仰ぎましょう。
生理用のナプキンや産褥シートをあてる
病院へ行くまでの間にある程度の時間がかかりますが、その間も羊水は出続けています。そのまま移動することは難しいため、夜用のナプキンや産褥シートを下着に着けておきましょう。
入浴は絶対にしない
破水(またはおりもの)の影響で下着や服が濡れてしまった場合だと、「一度体を流してきれいにした方が病院に行くにあたっては良いことなのでは?」と考えるかもしれませんが、これは絶対に避けてくださいね。
破水した場合は卵膜が破れて子宮外と赤ちゃんとの壁がなくなっているため、細菌が子宮内に入りやすくなっている状態になっているんです。
入浴やシャワーできれいにしたつもりが、シャワーや湯船の細菌を子宮内に侵入させて赤ちゃんを危険な状態にしてしまう危険性があります。清潔を考えるのであれば、下着をきれいなものに替えることが重要、決してウォシュレットで洗ったり拭いたりするのはやめましょうね。
病院へは自分で運転しない
痛みや出血を伴うなど、緊急性が高い場合を除けば、救急車を呼ぶのは控えた方が良いかもしれません。昨今は新型コロナウイルスの影響によって、救急車がすべて出払っている可能性がありますので、誰かに車を運転してもらうか、タクシーを呼んで病院へ連れて行ってもらってください。
「自分で運転するのはダメなの?」と思われるママさんもおられるでしょうが、破水している可能性を考えると、ひょっとしたら陣痛が待っている可能性もあります。いざというときに動けなくなる可能性を考えると、ママさん1人だけで運転するのは非常に危ない。。パパさんやご家族に頼ることが難しい場合は、タクシーの手配も忘れないで。
「水っぽい」以外にも妊娠後期はおりものが変化することに注意
妊娠後期になると、破水との区別が難しい可能性もある水っぽいおりものに変化するママさんも珍しくありません。しかし、妊娠後期には「水っぽい」以外にも、おりものはさまざまな状態に変化する可能性があるんです。問題なのは「何かの病気が原因でおりものが変化している」というケースになります。
ここでは、妊娠後期におりものを変化させてしまう原因となる病気と、その病気になるとおりものがどのように変化するのかについて解説します。
細菌性腟症
おりものが「黄色や緑色、または灰色である」「いやなにおいがする」場合は、細菌性腟炎を患っている可能性が考えられます。健康な腟の状態が損なわれて複数の菌が過剰に増殖した状態で、腟錠や内服薬を用いて治療していきます。
カンジダ腟炎
おりものが「白いカッテージチーズのようなかす状である」「量が多い」「かゆみを伴う」などの症状があれば、カンジダ腟炎を患っている可能性があります。カンジダは腟内の常在菌の1つなのですが、妊娠中は免疫力などの関係でこれが増殖しやすく、症状の治まりと再発を繰り返すこともあるんです。
出産時に産道で赤ちゃんに菌が感染する心配もあるので、出産の前に治しておきたい病気でもあります。清潔に保ちたいがゆえに石けんなどによる腟の洗いすぎは、かえって症状を悪化させる可能性があるため、絶対に控えてくださいね。
クラミジア感染症
多くの場合は無症状なのですが、おりものが増えることも見られるのがクラミジア感染症という病気です。この病気は流産や早産の原因になる可能性があったり、出産時の産道感染で赤ちゃんが肺炎や結膜炎を起こしたりする可能性がある危険な病気のため、検査で陽性と診断されれば抗生物質を服用して治療します。
腟トリコモナス症
おりものが「濃い黄色や緑色である」「泡状にになっている」「強い悪臭を感じる」「かゆみや痛みを伴う」という場合には、膣トリコモナス症という病気を患っている可能性があります。これはトリコモナスという原虫による性感染症で、腟内の酸性度が上がって大腸菌や腸球菌が腟内に浸入してしまうという状況になります。
常位胎盤早期剥離や前置胎盤など
おりものが「サラサラとした鮮血である」「激しい痛みを伴う」という場合には、常位胎盤早期剥離や前置胎盤などの症状が疑われます。
これらの症状は切迫早産など危険な状態をもたらす可能性が高いので、この兆候が見られた場合には、適切な処置を受ける必要があります。速やかに病院に連絡してくださいね。
おりものの変化には速やかに気が付けるように日ごろからチェックを
おりものは、妊娠後期にさまざまな状態に変化する可能性がありますが、その変化の中には何らかの病気や異常事態を知らせるためのサインである可能性は捨てきれません。
出産を間近に控えている状況において、ママさんや赤ちゃんに悪影響を及ぼす病気や異常の存在は無視できませんよね。重要なことは「日ごろからおりものや体調の変化に気がつけるようになっておく」ことです。「今日はいつもと違うな?」「なんだか体調が優れないような?」といった、ちょっとした変化でも妊娠中は注意していきたいことなんです。
ママさんが気づいている体調の変化は、実は大きなトラブルの予兆である可能性は十分にあります。それに気がつくことができれば、少しでも早く適切な行動をとることができるでしょう。早めに気づいて少し安静にしていればまた落ち着くことも多くあります。
もちろん、水っぽいなど、おりものの変化の中にはホルモンバランスの変化に伴う一時的なものや危険性のないものであるケースも少なくありません。
しかし、「このおりものの変化、何かの病気かも?」とずっと不安を抱えてストレスを溜めこんでしまうよりは、きちんと医師の診断を受けて必要に応じて治療を受けるほうが、ママさんの心身の健康にも良いことです。妊娠中に不安でないママさんはいないはずです。気になることは何でも聞いて安心につなげていきましょう。
まとめ
妊娠後期の水っぽいおりものは、女性ホルモンの影響によるものである可能性もありますが、破水だった場合には、治療が必要な状況である可能性もゼロではありません。
そのほかにも、妊娠後期にはおりものがさまざまな状態に変化して、中にはその原因が危険な病気である可能性もあります。水っぽいなど、妊娠後期におりものの変化に気が付いたら、念のため早めに病院に連絡をして、医師の指示を仰ぐ必要がることを覚えておくと良いですね。
必要以上に怖がる必要はありませんが、妊娠中は何が起こるかわかりません。おなかの中の赤ちゃんも毎日成長してくれています。ママさんにできることは、栄養のある食事を摂って無理をせず、万が一にも備えて、無事に出産を迎えるということです。