大人でもかかる病気に「黄疸(おうだん)」と呼ばれるものがありますが、これは生後まもない赤ちゃんでもかかる可能性があります。「赤ちゃんが病気になる!?」と驚かれるママさん・パパさんも多いでしょうが、実は「新生児黄疸」と呼ばれるこの症状は基本的に心配する必要はないので安心してください。
しかし、中には「病的黄疸」と呼ばれる、治療が必要になる黄疸にかかる赤ちゃんもいます。病的黄疸は放置すると大変危険な病気であり、ママさん・パパさんは早めに対処してあげる必要があります。
ここでは、なぜ新生児が黄疸にかかるのか、その原因と、ママさんができる予防法についても解説します。(ちょっと難しい話も出てくるけど読んでみてね!)
目次
新生児黄疸って、どんな病気?
まずは、そもそも「黄疸」がどのような病気・症状なのかについて解説します。
黄疸とは?
「黄疸」とは、簡単に言えば「皮膚が黄色くなる病気」のことです。
私たちの身体をめぐっている血液中の赤血球には「ヘモグロビン」と呼ばれる物質が含まれていますが、これが分解されると「ビリルビン」と呼ばれる色素を生み出します。この物質は肝臓などの臓器を通過して、最終的に便(一部は尿として)に含まれて排泄されます。健康的な便の色が茶色なのは、ビリルビンの影響によるものなんです。
ところが、何らかの理由でビリルビンを正常に排出できない状態に陥ることがあります。排出できないビリルビンは体内に再吸収され、血液中に戻されます。このビリルビンという色素は、血液中に大量に含まれていると、最終的に皮膚などに沈着してしまいます。そのため、皮膚が通常よりも黄色くなってしまうんです。
新生児の黄疸
黄疸を大きく分けると「成人の黄疸」と「新生児の黄疸」と呼ばれるものに分類することができます。成人の黄疸は肝機能障害などを原因として治療を必要とするケースが多いのですが、新生児の黄疸はそうでもありません。
生後2~4日ほどをピークとして、新生児の皮膚は通常よりも黄色味を帯びるようになります。
しかし、これは正常なものであるケースが多いため、基本的に治療を必要としません。というよりも、生後2~4日ともなれば、まだ産婦人科の中にいるでしょうから、もし治療が必要であればすぐにでも治療を受けられるでしょう。(なのでママさん安心してくださいね。)
新生児黄疸の原因は3つ
さて、新生児も多くの場合で黄疸にかかることはわかりましたが、ではなぜ新生児の多くが黄疸を発症することになるのでしょうか?
基本的な原理は大人と同じ「ビリルビン」が原因
先ほど、大人の黄疸のメカニズムについて簡単に解説しましたが、新生児黄疸の場合も原因となる物質は赤血球が壊された際に発生する「ビリルビン」にあります。血中のビリルビン濃度が高くなってしまうことによって、皮膚が黄色味を帯びてしまいます。
新生児は血液が濃い
新生児が黄疸になる原因は、1つ目に「新生児の血液は濃い目である」ことが挙げられます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人よりも赤血球の数が多いんです。なぜなら、お腹の中にいる間の赤ちゃんは、自力で酸素を取り込めないので外にいる状態よりも血液中の酸素が薄いため、限られた酸素を効率よく全身に運ぶ必要があります。
そのため、赤血球を多めにしておく必要があるんです。一方で、赤ちゃんの赤血球の寿命は大人よりも短いんです。そのため、たくさんの赤血球が短い時間で壊れるため、血液中のビリルビンは増えやすくなるんです。
肝機能が整っていない
新生児が黄疸になる原因は、2つ目に「新生児は肝機能がまだ整っていない」ことです。
肝臓に限らず、産まれたばかりの赤ちゃんはまだ内臓の機能が不完全なのは、ママさんも知っているでしょう◎
先ほど少し触れていますが、ビリルビンや黄疸は肝臓の機能が深く関わっています。大人の場合、肝機能障害として黄疸を発症することがありますが、赤ちゃんの場合は未発達の臓器ゆえに肝機能も正常ではないんです。
健康的な大人ほど肝機能が整っていない新生児は、肝臓でのビリルビンの処理が大人ほど正常に働きません。
そもそも再吸収の割合が多い
新生児が黄疸になる原因は、3つ目に「新生児はそもそもビリルビンを再吸収する割合が多い」ことです。
お腹にいる間の赤ちゃんはうんちを出せないので、発生したビリルビンは母親の血液に送って処理してもらう必要があります。そのため、お腹にいるときは腸に出したビリルビンの大部分を再吸収して、血液に戻すような仕組みになっています。
産まれた直後は、この仕組みがまだ残っているため、お腹の中にいた時の名残として腸でのビリルビン再吸収の割合が多いままなんです。
「生理的黄疸」と「病的黄疸」の違いは?
最初にも書いた通り、新生児がかかる黄疸には「生理的黄疸」と呼ばれるケースと「病的黄疸」と呼ばれるケースの2種類があります。
生理的黄疸
「生理的黄疸」とは、赤ちゃんの身体的特徴ゆえに起こり得る、基本的に対処・治療の必要がない黄疸です。(自然に治ると考えられているので安心ですね。)
前にも書いたとおり、その身体の仕組みが理由で、新生児は基本的に黄疸になりやすいとされています。
生理的黄疸は新生児の多くに見られる症状ですので、多くの場合は健康上とくに問題を生じることはありません。多くの場合は遅くとも生後1週間ごろには黄疸の見た目は解消されるので、経過観察で済まされるケースが多いでしょう♪
病的黄疸
それに対して「病的黄疸」とは、文字通り何らかの病気を原因として発症する黄疸です。
生理的黄疸が自然に発生して危険性がないのに対して、病的黄疸は原因疾患の治療も必要ですし、黄疸に対する治療も必要になるでしょう。原因としては、先天性の疾患もありますが、生後に発症した病気が原因になっているケースもあります。
また、母親との関係が、病的黄疸の原因になっている可能性もありますが、多くの場合は母親に責任はありませんのでママさんは安心してくださいね。
どちらにしても、病的黄疸を発症した場合は早めに適切な治療を受ける必要があります。
血液中のビリルビンが少し多くても、多くの場合は身体に大きな悪影響はありません。しかし、あまりにもビリルビン濃度が高いと、体に悪い影響を与える可能性があります。
最も注意が必要なのは「脳への影響」です。
高い濃度のビリルビンは、脳の組織にダメージを与えてしまいます。これを放置すれば、後遺症として体に麻痺が残ってしまうこともあるため、高すぎるビリルビンに対しては適切な治療が必要となります。
病的黄疸の原因は3つ
病的黄疸の原因となるのは、主に以下の3つの病気です。
新生児溶血性疾患
「新生児溶血性疾患」とは、母親の体内で作られた抗体が、赤ちゃんの血液(赤血球)を壊してしまう病気です。
主な原因は、母親と胎児の血液型が異なる場合が挙げられます。
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簡単に説明すると、母親と胎児の血液型が異なる場合、母親の体内では胎児の血液を異物として判断し、これに対抗するために抗体が作り出されます。この抗体が胎児の体内に移動し、産まれてきた新生児の体内に残っている場合、攻撃対象である自身の赤血球を壊されてしまうんです。
前にも書いたとおり、黄疸の原因であるビリルビンは、赤血球が壊された際に発生します。
そのため、新生児の体内では次々に赤血球が壊されてしまうため、ビリルビン濃度が高くなり病的黄疸を発症してしまうんです。また、赤血球の数が足りなくなってしまうため、「貧血」の症状も見られるケースが多くなります。
新生児肝炎症候群
「新生児肝炎症候群」とは、何らかの原因によって肝機能が低下してしまう病気です。
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先天性胆道閉鎖症
「先天性胆道閉鎖症」とは、先天的に胆汁が流れる管(肝外胆管)がつまっている病気です。
この病気も、詳しい原因は解明されていません。1万人に1人の頻度で発症するといわれていますが、女児に多いといわれています。また、妊娠中の母親がウイルスに感染したことが原因で発症するのではないかという意見もあります。肝炎と同様に、うんちやおしっこに異常がみられます。
病的黄疸の治療法について
病的黄疸は、原因疾患の治療も当然ながら必要になりますが、黄疸自体の治療も必要になるケースがあります。
光線療法
1つ目の治療法は「光線療法」という治療法です。
黄疸の原因は、血液中に多く存在しているビリルビンです。血液中の高いビリルビン濃度を減らすために、最も一般的な方法は光を当てることなんです。
特殊な波長の光を赤ちゃんの体に当てることによって、血液中のビリルビンを分解することができます。
交換輸血
2つ目の方法は「交換輸血」という治療法です。
前にも書いたとおり、光線療法を実施することによって、新生児の黄疸の症状は大部分が改善されるでしょう。しかし、重度のケースだと、光線療法だけでは十分に新生児黄疸を改善することができません。
黄疸の原因は、血液中のビリルビン濃度が通常よりも高い状態にあることです。そのため、光線療法で改善できない重度の黄疸に対しては、赤ちゃんの血液を輸血によって交換し、ビリルビン濃度の低い状態にする治療法が選択されるケースもあるんです。
危険な黄疸を早く察知するためには?
先ほども少し書いていますが、血中のビリルビン濃度が極めて高い状態を放置すると、最悪の場合は脳機能に障害をもたらし、後遺症を患ってしまう可能性もあるんです。
生後24時間以内の黄疸に注意する
まずは「生後24時間以内の黄疸」には十分に注意してください。
通常、新生児黄疸は生後数日してから発症します。そのため、生後24時間以内に黄疸の症状が見られる場合、病的黄疸である可能性が高いんです。
通常、産まれたばかりの状況は産婦人科の中ですが、自宅出産を選択した場合は十分な医療的サポートが受けにくい状態です。
皮膚の状態をチェックする
次に「赤ちゃんの皮膚の状態をチェックする」ことです。
通常、生理的黄疸の多くは生後1週間までにはなくなります。しかし、病的黄疸の場合は生後2週間が経過しても黄疸の症状が見られることが多いんです。
そのため、赤ちゃんの皮膚の色や状態は常にチェックしておき、黄疸の兆候が見られたらいつでも医療機関を受診できるようにしておきましょうね。
うんちの状態をチェックする
次は「うんちの状態をチェックする」ことです。
黄疸の症状は、肝臓などの臓器が関わっていることが多いのです。
処理されるビリルビンはその多くがうんちと一緒に排泄されますが、ビリルビンが血中に多くなるということは逆に言えばうんちの中のビリルビンが少なくなっているということになります。
他の症状にも十分注意を
これは新生児黄疸に限った話ではありませんが、赤ちゃんの病気は単一の症状ではないケースも多いんです。
黄疸の場合であれば皮膚の色だけでなく、
- ・うんちやおしっこの状態
- ・体重の増加具合
などにも影響することがあります。こうした症状を正確に把握していれば、病気の早期発見だけでなく、診察時の重要な判断材料にもなって適切な治療を受けやすくなります。(不安な時は、すぐ医師に相談したり受診してくださいね!)
母乳が黄疸の予防になることも
母親としてしてあげられることとしては「母乳を十分にあげる」ことが挙げられます。
たくさん母乳やミルクをあげることによって、たくさんの水分が赤ちゃんの体に吸収されます。これによって、赤ちゃんの血が薄まってくれるため、結果としてビリルビン濃度を下げることができるんです。
さらに、腸を動かしてうんちを出してあげることにもつながるため、これも体のビリルビンを減らすことになります。
まとめ
新生児に黄疸がでるのは珍しいことではないと聞いていても、出産を終えてから「赤ちゃんに黄疸がでているから…」と聞くととても心配になってしまうママさんも多いものです。
実は私も、産後しばらくしてから、赤ちゃんに黄疸が少しあるからということで治療を受けたという経験があります。
新生児の黄疸は安全な原因であるケースが多いのですが、場合によっては病的黄疸という危険な病気である可能性もあります。
ママさんとしては不安になることもあるでしょうから、小児科に相談するなどして、お子様の様子を見守ってあげてくださいね。