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妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは?症状や産後の回復について解説!

2022年5月17日

妊娠高血圧症候群というのをご存じでしょうか。妊娠糖尿病と同じく、妊娠中に気をつけなければいけない病気のひとつです。妊娠中はホルモンの影響もあり、少しのことがきっかけで病気を引き起こしてしまいます。誰にでも起きる可能性のあるものなので、少しでも知っておきたいですよね。

 

この記事では妊娠高血圧症候群とはどのようなものか、原因や症状について説明し、産後はどのような状態になるのかについても解説していきます。妊娠中の病気について知りたいという方は是非ご参考になさってください。

 

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧症候群は、約20人に1人の割合で起こるものです。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、現在は妊娠高血圧症・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症・高血圧合併症の4種類をまとめて妊娠高血圧症候群としています。

 

妊娠高血圧症それまで高血圧ではなかった方が妊娠20週~産後12週の間に高血圧になってしまう
妊娠高血圧腎症妊娠高血圧症に加え、たんぱく尿、肝腎機能障害、肺水腫、子癇、視覚障害、頭痛、子宮胎盤機能不全などの症状も

たんぱく尿だけ出ても妊娠高血圧腎症には当てはまらないが、逆にたんぱく尿がなくても、高血圧とその他の症状があればこれに当てはまる

加重型妊娠高血圧腎症3つのパターンあり

・妊娠前や妊娠20週までに高血圧の症状があり、妊娠20週以降たんぱく尿が見られる

・妊娠前や妊娠20週までに高血圧とたんぱく尿の症状があり、妊娠20週以降にどちらか、あるいは両方が悪化する

・妊娠前や妊娠20週までにたんぱく尿の症状があり、妊娠20週以降に高血圧の症状が現れる

高血圧合併症妊娠前や妊娠20週までに高血圧の症状があり、加重型妊娠高血圧腎症を発症していない

 

妊娠するまで高血圧になったことがない方も、妊娠前から高血圧だった方もなる可能性のある病気なので、妊娠が分かったら自分の血圧について気にするようにしましょう。

 

妊娠高血圧症候群の原因

妊娠高血圧症候群の原因ははっきりとは分かっていませんが、有力なのが胎盤の異常です。胎盤は赤ちゃんを守ってくれる大切な役割を持っています。しかし何らかの理由で胎盤が正常な状態ではなくなり、さまざまな物質を作ってしまうことで血管に影響してしまうのではないかというのです。

 

その他にも年齢や体質などさまざまな要因が重なっているかもしれません。しかし妊娠高血圧症候群は日頃から気を付けていても誰もが発症する可能性があります。そのため、もし妊娠高血圧症候群と診断されたとしても自分自身を責めないようにしてくださいね。

 

妊娠高血圧症候群の症状

妊娠高血圧症候群は重症化するとさまざま症状が現れます。しかしはじめは何か自覚症状があるわけではなく、妊婦健診で血圧の異常を確認し初めてわかるのです。重症化すると起こる症状を以下に挙げていきます。

 

子癇発作(しかんほっさ)・妊娠20週以降に初めて起きるけいれん発作のこと

・頭痛、目がチカチカする、胃痛といった前兆も

・発作が治まらない場合には、できるだけ早く出産

(母子の命に危険が及ぶ恐れがあるため)

HELLP(ヘルプ)症候群・血液中の血小板が減少、肝臓機能の低下によって起こる

・腹痛、胃痛、吐き気、嘔吐など

・症状が進むと血液が固まりにくくなる

・できるだけ早く出産

(母子の命に危険が及ぶ恐れがあるため)

常位胎盤早期剥離・正常な位置にあった胎盤が、出産前にはがれること

・出血、腹痛、子宮が異常に硬くなる、胎児の動きが少なくなる

・胎盤のはがれる部分が大きいと出血多量に

・早急に出産

(赤ちゃんの死亡や脳性麻痺などの高いリスクがあるため)

胎児発育不全

胎児機能不全

・子宮や胎盤での血液の流れが悪く、赤ちゃんが栄養不足や酸素不足に

→赤ちゃんが十分に育たない(胎児発育不全)

低出生体重児が生まれる

胎児の心拍に異常(胎児機能不全)

・帝王切開になる場合が多い

・最悪の場合は子宮内胎児死亡になることも

脳出血子癇発作によって引き起こされる場合あり

 

このように重症化すると、さまざまなリスクがあります。これはお母さんにもお腹の赤ちゃんにも両方にいえることです。そしてこれらは出産後も起こる可能性があるため、油断してはいけません。

 

妊娠高血圧症候群の診断方法となりやすい人の特徴

妊娠高血圧症候群は原因がはっきりわかっていないため、自覚症状もほとんど出ません。ではどのように検査をし、診断されるのでしょうか。ここでは妊娠高血圧症候群の診断方法やなりやすい人の特徴について解説していきます。

 

妊娠高血圧症候群はどのように診断される?

妊娠高血圧症候群の診断方法には血圧測定と尿検査があります。これらによって尿中タンパクを測定。高血圧と診断される基準は以下のとおりです。

 

約6時間以上空けて2回以上

・収縮血圧が140mmHg以上

・拡張期血圧が90mmHg以上

・両方がみられる場合

 

しかし尿検査でタンパク尿+1の結果が出ても、精密検査ではその結果が偽陽性であることも多々あります。そのため、きちんとした診断を下すためには、24時間の尿を集めて1日のタンパク尿を正確に測定する必要があるのです。

 

妊娠高血圧症候群になりやすい人

妊娠高血圧症候群の原因ははっきりしていませんが、妊娠高血圧症候群になりやすい人の特徴というのがあります。

 

・35歳以上、15歳以下

・初産婦

・多胎妊娠

・肥満

・血のつながった家族に高血圧や妊娠高血圧腎症の人がいる方(特に母親、姉妹)

・血のつながった家族に糖尿病の人がいる方

・甲状腺機能異常

・以前、妊娠高血圧症候群になったことがある

 

詳しい原因は分かっていないため、上記のような特徴を持つ人が必ずなるというわけではありません。しかし「なるリスクが高まる」ということには変わりないので、上記に当てはまる人は気を付けるようにしましょう。

 

治療法と産後の状態

妊娠高血圧症候群と診断された後はどのような治療が待っているのでしょうか。また産後の状態についても解説していきます。

 

どのように治療する?

まず症状の状態によって治療法を変えていきます。症状が軽度の場合は通院となり、薬ではなく食事療法や十分な睡眠、適度な運動などをし、ストレスをためずに過ごすよう心がけてください。好きなことをしてリラックスすることが大切ですよ。

 

食事療法のポイント
・医師の指示に従って行う

・過度な食事制限は禁物

・水分摂取制限や利尿剤の服用も血栓症を高めてしまうリスクも

 

そして重度の症状が出ている場合、基本となるのが入院と安静にしておくことです。胎児への影響も考えながら投薬治療を行います。

 

妊娠中の薬の服用はお母さんにもお腹の中の赤ちゃんにもリスクが高いです。けいれん予防の点滴を行うこともありますが、お母さんの血圧が下がると、酸素や栄養が赤ちゃんへ届けにくくなります。低酸素や低栄養になってしまう可能性もあり、急激に血圧が上昇した場合には、薬だけでは症状がよくならないこともあることをご承知おきください。

 

一番の方法は出産?

お母さんもお腹の中の赤ちゃんも危険な状態にある場合、赤ちゃんがある程度成長していれば緊急帝王切開か促進剤を打っての出産という方法があります。完全な治療法というわけではありませんが、出産することで血圧の値が急激に良くなるからです。

 

この場合は早産となるため、NICUなど設備が整った病院への転院することもあり、さまざまなパターンを想定しておく必要があります。

 

産後はどうなる?

産後はほとんどの方が徐々に正常な血圧に戻っていきます。軽症だった場合は特に心配いりませんが、日頃から運動をしたり塩分を摂りすぎないよう気を付けたりすることは続けていくといいでしょう。

 

しかし、重症だった場合は産後もなかなか数値が高いまま下がらないという方も多いようです。その場合はしばらく降圧剤などの薬を飲まなければなりません。その他にもむくみなどの症状が出ることもあるので、薬を飲むこと以外にも、運動や食生活の改善など積極的に行ってくださいね。

 

予防法をご紹介!

できることなら妊娠高血圧症候群になるのは避けたいですよね。ここでは妊娠中にできる妊娠高血圧症候群の予防法についてみていきます。ポイントは以下のとおりです。

 

妊婦健診を受ける

妊娠高血圧症候群は妊婦健診でいつも行っている血圧の測定で発覚することが多いので、きちんと決められた週に健診を受けるようにしましょう。見逃しを防ぐことができるので、早期発見につながります。

 

塩分を控える

妊娠中は酸っぱいものや塩気のあるものが食べたくなるかもしれませんが、なるべく塩分は控えるのがおすすめです。レトルトや外食、お惣菜なども減塩のものを選ぶようにするといいですね。

 

体重を毎日チェック

妊娠中は、病気のリスクがあるないに関わらず体重増加を避けなければなりません。妊娠中も動きづらくなりますし、出産時が大変になります。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になる可能性も高くなるので、医師や看護師に指摘された場合は特に気を付けて、あまり一気に体重が増えすぎないようにしてください。

妊娠中の体重増加はいつから?目安は?「体重増加がとまらない・・」

リラックスする

妊娠中は体も心も休める時間を作ってください。横になることで血流が良くなるので、血圧の上昇も抑えられます。

 

まとめ

妊娠中の病気は原因がはっきりとしていないのがやっかいなところ。そのため、気を付けているつもりでも、年齢や体質などさまざまな要因が重なって病気を発症してしまうこともあります。

 

妊娠高血圧症候群も同じく、はっきりとした原因は分かっていませんが、誰もがなる可能性のある病気です。そのため、もし診断がされたとしても落ち込んだりせず、改善することまたは悪化させないことに集中しましょう。

 

不安がある場合は、医師や看護師に相談し、生活習慣を見直すようにしてください。産後の状態にも関わりますし、次のお子さんをお考えの方も少しでもリスクを抑えることにつながります。無事に元気な赤ちゃんを出産できるよう心から祈っています。

 

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  • この記事を書いた人

助産師ゆき

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助産師免許
保健師免許

8年間助産師として勤務し、様々な妊産褥婦さんと関わり勉強させていただきました。
その後2020年に第1子を出産し、今までの経験を総動員して育児をしてみたものの上手くいかないことが多々あり、育児の難しさを身に染みて感じました。でもそれ以上に子供は可愛く大変さも吹き飛ぶ日々。現在は育休から復職し、育児の経験を踏まえ、専門的な知識だけではなく、生活で役に立つ情報を伝えられたらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします!
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